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リドリー・スコットとSF映画2009.12.04

一番怖かった映画は、と聞かれたら迷わず「エイリアン」と答えている。
怖さから席を立って逃げ出したくなった映画は、後にも先にもこれだけです。
どこから襲ってくるか分からないエイリアンに筋肉を強張らせて緊張し、
宇宙船の乗組員と一緒に神経をすり減らしてぐったりしました。
劇場を出たときには、命の危険から無事に生還したような安堵感さえ覚えましたね。

この映画の監督は今では巨匠扱いのリドリー・スコット。
イギリスのCM出身の映像作家で「エイリアン」は監督2作目でした。
この人の3作目が「ブレードランナー」。
こちらは弱っちいハリソン・フォードに不満が残った微妙な映画だったが、
何だか気になる映画でもあり、レンタルやテレビ放送の録画を何度も見返して
新しい発見を繰り返し、今では自分の映画史でベスト10に入っている。

個人ランキングで恐縮だけど「エイリアン」もベスト10にランクインしている。
同じ監督でベスト10に2作以上入っているのは彼と黒澤明だけであり、
SFというジャンルでは現状この2作だけだ。

一時期この2作を形容する際は、
ちょっと陳腐だけど「完璧なSF映画」という言葉を使っていました。
そのココロは嘘のつき方にある。
持論だけどSF映画で大切なことはサイエンスとフィクションのバランス。
それらしい大嘘(フィクション)をひとつ捻り出して、
それ以外の描写は極力リアル(サイエンス)を追求することだと思っている。
効果的に使われるのであれば、嘘はひとつで充分。
このリドリー・スコットの初期の2作品にはそれが徹底されている。
「エイリアン」の嘘はエイリアンの存在。
「ブレードランナー」ではレプリカントの存在。
その嘘以外は、それらしく世界観を整えることに腐心している様が良く分かる。
結果は映画の見応えとして跳ね返って来ます。
黒い石版で嘘をついている古典的SF映画にもこの理屈は当てはまりますね。

SFという言葉を免罪符と勘違いして、
ぐたぐだと適当な嘘を並べ立てる映画はSFと呼びたくない。
「スター・ウォーズ」などは好例で、あれは宇宙を舞台にしたファンタジーですね。
その意味で、リドリー・スコットはツボを心得た創り方をしてたと思います。

最近のSFと言われる映画の大半は内容がスカスカ。
理由はCG技術の進歩によるスペクタクル表現に偏重しているからでしょう。
硬質で上手く騙してくれるSF映画が観たいと思うこの頃です。

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TAKASHI IKEGAMI/池上隆士
株式会社東北新社 プロデューサー