今回も前回に続き、イギ―ポップです。私のグルであり、最強のアイドルです。
イギーはもう40年のキャリアを持ち、今も現役です。それもストーンズのようなお客様の期待にこたえる「芸人」で名なく、表現したいことがあふれ、新しいことにチャレンジし続ける、まさに「転がり続ける石、というか岩」です。
ですからはっきりいって失敗作、愚作もあります。でもだからどうだってんだ、って感じです。
今を、リアルタイムで生きる彼の手紙というかドキュメントです。「作品」じゃねーぞ。
デトロイトで生まれたイギーのキャリアは1967年、Stoogesから本格的にスタート、3枚のアルバムを出しました。前回紹介の「Fun House」はその2枚目、今回のは3枚目です。どれも借金しても買って聞いてください。自分と世界が変わって見えて来る、すごい音です。
この3枚のレコードには、父親が反社会的インテリであったため、トレーラーハウスで育てられた欲求不満とコンプレックス、そしてナイーブなナルシズムの塊、ジェームス・オスターバーグ(イギーの本名)と、彼に「薬がほしかったら俺のバックバンドやれ」とそそのかされた、デトロイトの街をふらつく以外何もすることがなかった、薬漬けの不良33、そしてどこにも居場所がないこの4人の子供に、このような音を出させざるを得なかった「1969〜1972年という時代」そして「アメリカ」、これらがギザギザに切り裂かれ、その傷口から流れ出す赤と黒の入り混じった血の生臭い匂いが満ち溢れています。
しかも不思議なのは、そこにはぬかるみに足を取られるようなぐちゃぐちゃ、どろどろでなくそのひどさを楽しむような、笑い続けるような感じがあり、その冷静さは「ポップ」とも言える感覚を持っているんです。多分それはイギーの自己批評のセンスであり、そのことが麻薬中毒などの苦境を何度も経験しながら、今まで変わることなく活躍して来ることができた原動力なのでしょう。
考えてみるとこの感じはSex Pistolsの「Never Mind the Bollocks」に共通するものがあります。(このアルバムはもっと「ポップ」ですがー最高です)それがイギ―ポップを、そしてこのstoogesの3枚のアルバムを「パンクの元祖」と多くの人が呼ぶ
理由なんだと思います。60年代後半のドロドロロックの世界観を持ちながら、つきぬけたポップさを持つStooges,最高です。
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HIKARU MACHIDA/町田光
NFL JAPAN 代表取締役社長 立命館大学客員教授 早稲田大学講師
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