昨年末、森高千里さんがテレビで「雨」を歌っていた。
某男性シンガーのデュエット・アルバムに収録されたとの事・・・。
アルバムのレコーディングと並行して、シングル予定の曲の詞を、本人が悪戦苦闘して書いていた。
作詞は歌手本人が手がける事になっているために、レコーディングのたびに(特にアルバム)、多大な負担がかかる。
ファイル名「90-14」のこの曲は、曲調に合う内容の詞がなかなか出来ず、すでに3〜4編の詞が没になっていた。
並行して、ディレクターS氏がアルバム収録用に「弾き語りでいいから、適当にアレンジしておいて」と、M君のデモ曲の入ったカセット・テープをウチに置いて行った。
聴いてみると、フォークっぽくはあるが、哀愁のあるバラードで“佳曲”だった。
「これは料理次第で良い物になる」という確信めいたものを感じ、アレンジにとりかかった。
後日「この曲は、絶対にいいですよ」とアレンジ・デモをスタジオで披露した。
一同大変気に入り、その場のディスカッションで間奏を付ける事になった。映画のサウンドトラックの様なストリングスが浮かび、その場で間奏を仕上げた。詞もスムーズに付いた。
前述した、詞で難航していた曲よりスムーズに仕上がった分、勢いがあり、シングルに向いている気がして、私の進言で(ディレクターS氏も同感だったらしく)、このバラード曲をシングルに差し替える事になった。
ちなみに、これによりシングルカットを逃した曲は、私の曲で、「あるOLの青春」としてアルバム曲に「格下げ」になった(笑)。
シングルを1曲逃したのは大変残念だったが、後に歌い継がれる名曲「雨」を世に出せたのは、サウンド・プロデューサー冥利につきる。
「あるOLの青春」用に作られ、没になった詞の中に、ビートルズの「When I’m Sixty-Four」のようなストーリーの物があった。これが後に日の目を見る事になる・・・。(続く)