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TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

共進化(イヌビワとイヌビワコバチ)2017 / 06 / 12

五月晴れ
“あなたの車はリコール対象車です”と以前住んでいた善福寺のディーラーから知らせが届いていた。
—–手続きを済ませ、通い慣れた善福寺公園に立ち寄った。ここには誠に興味深いイヌビワがあるのだ。

複雑難解なイヌビワの生き残り戦略
イヌビワはビワの仲間ではなく、イチジクの仲間(Ficus属)。花期は4〜5月頃、花嚢(実のように見える)の大きさは約2cm。雌雄異株で、イチジクは漢語で「無花果」。花が咲かないのではなく、花は花嚢(かのう)の袋の中で咲く、隠頭花序だから表面的には見る事はできない。ゆえに、ハナバチや蝶などは花が咲いている事を知る由がないし、風媒花もしかり。

種子植物のイヌビワは、ほかの花と少し変わっている。
雄株の花嚢の中には雄花と虫えい花(不稔性の雌花=やがてイヌビワコバチの揺りかごになる子房)が混在。ほとんどの子房はイヌビワコバチに寄生され幼虫の餌となるので、雄株の花嚢には種子が育たないのです。雄株の花嚢はイヌビワコバチのためにアパートとして存在し、そのアパートの家賃は花粉を運ぶことで支払う、と例えればいいでしょうか。でも、なかには家賃を支払わない輩が入居したりします。その時には、部屋の水道、電気などのライフラインを止めるように、花嚢への栄養を遮断して花嚢を枯らす制裁をとるそうです。雄株の花嚢のゆりかごの中で育ったイヌビワコバチは、オスが一足早く蛹から羽化し(オスには羽はないけれど羽化という。孵化ではありません)子房から出て、羽化前のメスの子房に穴を開け交尾します。オスは生まれた雄株の花嚢の中で一度も外に出る事なく、交尾を済ませると健気にもメスのための脱出口を開けて、短い一生を終えるのです。オスが花嚢の鱗片を開けると、雄花の花粉が一斉に鱗片の入り口近くで放出され、交尾を済ませたメスは、花粉を付けて若い花嚢を探しに外に飛び出します。

いっぽう、雌株の花嚢の中には、雌花だけが咲きその柱頭は雄株の柱頭よりも長いので、イヌビワコバチの産卵管が胚珠まで届かないので産卵ができません。焦った?メスは花嚢の中で動きまわり、雌しべに触れて授粉のミッションを果たし短い一生を花嚢の中で終えます。

つまり、最初に雄株の花嚢に入れば子孫が残せ、雌株の花嚢に入ればイヌビワとの約束を果たし、種子が出来るシナリオになっているのです。

以前公開した「イチジクの花とコバチ」2012/9/28はコチラ
http://youchoose.camelstudio.jp/choosers/t_nishimura/2468.html

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆☆)」
「生態を理解し想像して、機材を準備」
被写体の寄生蜂がゴミみたいに小さいので、老眼鏡をかけて観察。幸運にも、イヌビワの雄花にイヌビワコバチ(体長2mm前後)のメスが、鱗片口から潜り込む瞬間に2回ほど立ち会えました。そして、当たり前のようにイチジクコバチを宿主とする、イヌビワオナガコバチ(体長2mm前後:産卵管含まず)が沢山いて、あちこちで産卵を始めていた。楽しく観察を続けると、その先に想定外の事が起きたのです。テラニシシリアゲアリ(体長3mm前後)が現れ、いきなりイヌビワオナガコバチを襲ったのです。想定外に驚きましたが、その後も狩りの場面を3回ほど目撃。急いで連写に強いストロボ(Nissin i40)に付け替え、ストロボをマニュアルに設定し、出力1/64に絞りトライしました。「生態を理解して想像して、機材を準備」して撮影に臨めば、想定外にも慌てることなどありませんね。

撮影地:東京都杉並区 善福寺公園

カメラ設定
OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark II, レンズ:OLYMPUS M.30mmと60mm F2.8 Macro、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:Natural,Raw、ストロボ発光, 強制発光モード。

使用ソフト
PhotoshopCC2017.0.0使用(Rawデータ現像)

使用機材
OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark II, M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro、OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、
ストロボ:Metzメカブリッツ15MS-1 digital 、Nissin i40,コマンダーとしてFL-LM3使用

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

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