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TSUGIO NISHIMURA 西村次雄
フォトグラファー
1973年、九州産業大学芸術学部写真科卒。同年渡米。1979年、「STUDIO BB」を設立。デジタルの可能性にいち早く気づき、雑誌・広告を中心に一眼レフカメラを駆使して活躍中の”IT写真家”である。建築物、料理、人物、商品、そして動物・植物・昆虫と被写体の幅も極めて広い。

朽ちかけた一本のカエデと蜂2017 / 05 / 19

一本の朽ちかけた樹がある。
このカエデの半分は、クロヒラアシキバチとミダレアミタケに侵食されており4年ほど前から朽ちかけ始めていた。キバチは胎内にミダレアミタケ菌を蓄えていて、産卵時に菌糸も一緒に植え付け、白色腐朽菌のリグニン分解酵素で木を分解してもらうなど、共進化の関係にある。

さて、今回の主役「クロヒラアシキバチ」の事を少々、私の独断と偏見で解説しよう。
この蜂は産卵管を、毒針から木を枯らす毒腺へと進化させました。人間界ではこれらの種を、木を枯らす害虫として嫌っていますが、でも樹を枯らす事で、森の再生の一翼を担っているのです。その仕組はこうだ、植物に寄生するキバチは自ら枯れさせた樹の中に、産卵と同時にミダレアミタケ菌を植え付け、その材やカビ(キノコもカビも同類)が幼虫の餌となる。しかし栄養価の乏しい材やカビを食べていては成長が遅いので、そこにつけ込んだのが卵に寄生する寄生蜂なので。卵に寄生すれば栄養価が高く成長が早いので、キバチよりも先んじて主導権を握れるのです。先に生まれ出た寄生蜂は本能に導かれ、誕生したばかりのメスと交尾。命のバトンを託されたメスはクロヒラアシキバチの卵に寄生するという図式なのです。そこには、決して一種だけが繁栄できないように、絶妙なバランスが存在するのです。この画のカエデだけでも、交尾、産卵、寄生を4年ほど繰り広げた事になるのだから、生態系のバランスの見事さには驚くばかりです。

寄生蜂の種は多く、植物の葉や材に、卵に、蛹や幼虫などに寄生するなど多種多様です。
観察した結果、5月に確認できた寄生蜂はクロヒラアシキバチの他に、エゾオナガバチ、ニホンヒラタタマバチ、ヒメコンボウヤセバチ、オオコンボウヤセバチなど5種ほどでした。

この時の撮影技法「撮影難易度3星表記(☆☆)」
「生態の記録とキャプション」
1)ニホンヒラタタマバチの♂が、脱出口で♀の誕生のタイミングを触覚で探っている。
  絞り値:F6.3、シャッタースピード:1/160秒,ISO感度設定:1600
2)出てきた♀に素早く飛び乗り交尾。
  絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/160秒,ISO感度設定:200
3)エゾオナガバチは長〜い産卵管を差し込み、クロヒラアシキバチの卵に産卵。
  絞り値:F7.1、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:1250
4)クロヒラアシキバチの交尾。
  絞り値:F8.0、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:1250
5)クロヒラアシキバチの産卵菅の場所を背後からじっと見つめるニホンヒラタタマバチ
  絞り値:F7.1、シャッタースピード:1/6秒-0.7,ISO感度設定:1250
6)ニホンヒラタタマバチの♀に狂ったように群がる♂達。
  絞り値:F7.1、シャッタースピード:1/40秒,ISO感度設定:1250
7)ニホンヒラタタマバチの産卵。半透明の三角形の産卵管が見える。
絞り値:F9.0、シャッタースピード:1/200秒,ISO感度設定:1250

撮影地:東京都西東京市 東大演習林(立ち入り制限区域内にあり一般人立ち入り禁止)

カメラ設定
OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark II, レンズ:OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、焦点距離60mm、露出モード:マニュアル、露出補正:±0、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:Natural,Raw、ストロボ発光, 強制発光モード

使用ソフト
PhotoshopCC2017.0.0使用(Rawデータ現像)

使用機材
OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark II, OLYMPUS M.60mm F2.8 Macro、
ストロボ:Metzメカブリッツ15MS-1 digital 、Nissin i40,コマンダーとしてFL-LM3使用

POSTED BY:
tsugionishimura_image

TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

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