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KEISUKE KAWANISHI 河西啓介
株式会社Voice Publication代表取締役「MOTO NAVI」「BICYCLE NAVI」編集長
自動車のスクープ雑誌からモータージャーナリストの道を歩みはじめ、「CAR GRAPHIC」で有名な出版社・二玄社へ。自動車雑誌「NAVI」編集者を経て、現在はオートバイ&ファッション誌「MOTO NAVI」、自転車&ファッション誌「BICYCLE NAVI」の編集長兼「DYNAMITE POPS」のリードヴォーカリスト。

私は雑誌で、人生変わりました。2009.07.17

僕は活字大好きなのですが、読むのは書籍より雑誌のほうが圧倒的に多いのです。自分の手がけているジャンルの専門誌だけでなく、男性誌、ファッション誌、スポーツ誌、経済誌、女性誌に至るまで、ちょっと気になった雑誌はなるべく目を通すようにしています。月におよそ30冊は読んでいる(見ている?)んじゃないかな。
まあ僕の場合、いまは雑誌を作るということを生業としていますから、当然なのかもしれません。きっと「本と出会って人生が変わった」という人は少なくないと思いますが、僕の場合は、「雑誌と出会って人生が変わった」という感じでしょうか。で、ちょっと手前味噌になってしまいますが、僕の人生に大きな影響を与えたのは、他ならぬ「NAVI」という自動車雑誌なのです。
僕らの世代が社会人になった80年代後半から90年代は「就職したらまずクルマ」というのがお約束の時代。僕もさっそくアウトビアンキA112という中古のイタリア車を手に入れ、嬉々として乗り回していたのですが、そんなときに出会ったのが「NAVI」でした。
他の自動車雑誌の誌面がほとんどニューモデル情報や試乗インプレッションなどで構成されていたのに対して、NAVIはクルマという乗り物を通して「世の中」を見てみよう、クルマを文化的な見地から考えてみよう、というまったく異質な存在でした。書き手も浅田彰さん、田中康夫さん、神足裕司さんなどの文化人や作家をはじめ、あの宮崎駿さんがマンガを描きおろすなど(宮崎さんはご自分の事務所名を愛車のシトロエン2CVに由来とする「二馬力」とするほど、大のクルマ好きなのです)、雑誌自体が自動車を媒介とした「サロン」のような雰囲気を醸し出していて、当時20代前半だった僕はそうした人たちに憧れつつ、クルマを通じて世の中の見方、考え方を教わったような気がします。
 結局、僕は「NAVI」編集部の門を叩き編集者へと転職。その後、NAVI編集部を経て、オートバイや自転車専門誌の世界にも“NAVI的”な価値観を持ち込みたいと「MOTO NAVI」「BICYCLE NAVI」を手がけるに至るわけですが………。
思えばあの当時はまだインターネットという概念がなく、本や雑誌こそが大きなな情報源であり、またそこから発信されるメッセージの力も大きかったんですよね。現在では書籍はともかく、雑誌の世界は大部分がコマーシャリズムに支配されて、なかなか筋の通った雑誌が成立しにくい時代。それゆえ「雑誌と出会って人生が変わった」という経験もなかなかないと思います。ですが「NAVI」という雑誌に人生を狂わされた(?)僕としては、「読んで人生が変わった」とまでは言わずとも、少なくとも自分の作った雑誌を読んでくれた人の生活が少しでも楽しく、豊かになったらいいなと、そんなことを思って作っているのです。

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KEISUKE KAWANISHI/河西啓介
株式会社二玄社・「MOTO NAVI」「BICYCLE NAVI」編集長