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曼珠沙華に遊ぶオナガサナエ2009.10.14

彼岸花、別名「曼珠沙華」の名所「巾着田」に向かった。場所は西武池袋線高麗(こま)駅下車、徒歩約15分程行ったところある。

約100万本以上の真赤な花が一斉に秋風に揺れる様はまさに圧巻だ。
そこで今回は曼珠沙華に遊ぶ生き物にターゲットを絞り探してみることにした。

3時間程経った頃だろうか、魅惑的な色に誘われるように中型のトンボが留まった。
美しい緑色の複眼と尾部付属器の長さからみて「オナガサナエ」である!すかさず一枚目を撮影、さらにそーっと忍び寄り2枚目を、息を殺してさらににじり寄る。
頭の中は嬉しさと表現方法でオーバーヒート寸前だ。

                
オナガサナエ(尾長早苗)サナエ科
日本特産種で、体長は60ミリ前後の中型のトンボ。河原の石の上や枝先などにじっと静止していることがおおく警戒心が薄い。

察するに、この撮影場所が「高麗川」沿いのため、曼珠沙華に留まったのではないかと推測される。
成熟個体の放つ鮮やかな緑色の複眼と、長い尾がとても美しいトンボで曼珠沙華の赤い色とのハーモニーがとても素敵だ。

この時の撮影技法
警戒心の薄いオナガサナエはまるでプロのモデルみたいで撮りやすい。望遠レンズ、マクロレンズ、広角レンズと色々と試すことが可能だ。
今回は曼珠沙華の鮮やかな赤が主役で、オナガサナエは脇役である。しかしオナガサナエには主役を食うほどの存在感が感じられ小さく画面左上部に配置した。そして、オナガサナエの背景に少しだけ高麗川の水の青を隠し味程度に取り入れ、85ミリレンズ望遠レンズの圧縮効果で曼珠沙華のボリューム感を演出した。

カメラ設定
露出設定マニュアル、シャッタースピード1/125秒,絞りF5、ISO100。

使用機材
使用機材:Canon 1Ds MarkⅡ、24~105ミリISレンズ(84ミリで使用)。

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TSUGIO NISHIMURA/西村次雄
写真家

ズレの美学2009.09.24

親友から「これ、貸してやるよ」と、DVDを借りた。
「吉田喜重が語る小津安次郎の映画世界」。
“同じ松竹大船撮影所に所属していた吉田監督の視点から小津監督の秘密に迫った映画による映画作家論”であった。

このDVDには小津監督の代表作である「東京物語」「秋刀魚の味」などを通して吉田喜重が語ったドキュメンタリーで、そこで「ズレの美学」というものを気づかされたのである。

映画をまやかしと考えていた小津監督は、演じるという枠から超えることができない現実に対し、なんの意味も持たない日常のカットを挿入することにより「ズレ」を生じさせ、見る者にこれから起こるであろう出来事をあらかじめ予感させる意味合いを持たせ、さらには役者の内面をあぶり出してしまうと効果を生み出しているのである。

「東京物語」では、妻を亡くした周吉役の「笠智衆」が次の日の朝、孫娘に話すシーンで、「いい夜明けじゃった、今日は熱くなるぞ」と一言。愛する者を失った悲痛な人間の言葉では無い、完全に期待を裏切ってくれる深みのある台詞であった。

そんな期待の裏切り方が写真でも応用できるのではないだろうか?と思う。
写真を撮るという現実枠からはみ出し、作るという非現実的な意識にして成り立つのである。
そんな違いの狭間で生まれる「ズレのある写真」も写真表現として面白いのではないだろうか,,,

Pentax 6×7
レンズ:30mm
ロケーション: カリフォルニア アルタデナ

POSTED BY:
yusuke_image

YUSUKE NISHIMURA/西村裕介
フォトグラファー

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