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ニコニコ軽音部2012.05.24

4/28、29、幕張メッセにて「ニコニコ動画を大体地上に再現する」というリアルイベント「ニコニコ超会議」が開催された。
9万2384人が訪れたイベントにはニコニコ動画に存在する「政治」「技術部」「歌ってみた」「踊ってみた」「Vocaloid」「動物」「料理」などほぼ全てのカテゴリーを網羅する各ブースが渾然と一つの場所に集まって巨大なカオスを創出していた。

その中の一つ「演奏してみた」カテゴリーを地上に再現すべく、自分は「ニコニコ超軽音部」というセッションスペースのプロデュースを担当した。

まずはこのスペースを作るきっかけとなった「ニコニコ軽音部」について軽く触れよう。

私はこのサイトの管理人である平坂氏と以前一緒のバンドを組んでいたことがある、という経歴でもわかるように青春時代の多くの時間をバンドで過ごした。

そんな音楽との縁なのかニコニコ動画においても、なにかとコンサートや「演奏してみた」カテゴリーに関わることが多く、その流れで「ニコニコ軽音部」という中高生をメインに楽器をレクチャーしていく生放送番組を手がけることになった。
このニコニコ軽音部のギター編では、プロギタリストの加茂フミヨシ氏を招き、ジャズからハードロックまで色々なテーマを扱った。
(オンラインで行われたギターレッスンとしては、Steve Vaiが行った授業よりも多くの視聴者を集め、ギネス認定を受ける)
そしてベース編では、日本を代表する名プロデューサー/ミュージシャンの佐久間正英氏が講師。
伝説のバンド「四人囃子」のメンバーで、BOOWY、JUDY AND MARY、GLAYなどをプロデュースし、
日本の音楽シーンを作ってきた佐久間氏がニコニコ生放送で中高生に逆アングル・ピッキングを伝授する日が来るとは音楽業界の誰も想像できなかったに違いない。

ユーザーが生放送でレクチャーを観つつコメントで感想を入れるというインタラクティブな音楽教育番組。
実験的な試みだったが反響は好意的なものが非常に多く手ごたえを感じた。

元々ニコニコ動画においては、作品と呼ぶには未完成だったり不完全である「動画」が投稿されても、
それに対して突っ込みなどがコメントでなされることで新たな価値が加わり面白いものになったりしていく楽しさがあった。
最近ではニコニコ動画もかなり大きくなってきたため、クオリティの相当高い完成作品を発表する場としても機能し始めている。
そしてそれは気軽に投稿してみよう、といったユーザーにとってはハードルの高い場所になっていることを意味する。
「演奏してみた」のニュアンスには「〜してみた」という気軽な意味を含んでいたはずだ。

「ニコニコ軽音部」では単純なライブコンサートではない、インタラクティブなコミュニケーションを経て音楽が出来上がっていくプロセス、すなわち「セッション」も見せることができた。
この音楽におけるセッションはニコニコ動画の根幹であるコメントの応酬で動画が新たな意味を持ち作品としても進化していく、ユーザーがその過程に参加していく、という性質に非常に似ていると強く感じたのだ。

超会議において「演奏してみた」を地上に表現するならば、楽器を持たないユーザーが立ち寄っても参加したくなるような「セッション」できる場を提供したい、演奏のレベルを問わず音で対話して楽しくなれる場所を作りたい。これが「ニコニコ超軽音部」を作るにあたってのコンセプトである。

ここで紹介している動画は佐久間氏がセッションマスターとなって「ニコニコ超軽音部」スペースにて飛び入りのプレイヤーたちとセッションをしている様子である。
ここでは、他にも松武秀樹氏、氏家克典氏、浅倉大介氏などなど錚々たるプロミュージシャンに混ざってユーザーが飛び入りで参加し、音楽を楽しんでいた。
彼らの多くから感謝のコメントを頂いた、これが何よりも嬉しい手ごたえだった。

最後に、このスペースを作るにあたってはRoland, Fender USA、KORG、YAMAHA、Line6など楽器メーカーが「ニコニコ軽音部」の趣旨に賛同してくれて無償で機材提供してくれて初めて実現が可能となった。

ちなみにLine6の担当者は前述した平坂氏と一緒に組んでいたバンドのギタリストである。
バンドの意味はまさに「縁」なんだなぁと改めて思った。

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KOJI SAITO/齋藤光二
株式会社ドワンゴ ニコニコ事業本部 プロデューサー
Dwango Music entertainment, Inc. エグゼクティブプロデューサー