「失敗の本質」でとりあげられる6つの戦争(ケース)で、繰り返される指摘が「狭くて進化の戦略オプション」。
かんたんにいうと、バカのひとつおぼえ。
マーケティングでいうと「成功体験の罠」です。
劇的にうまくいった戦略、コンセプトがあると、環境が変化してもそれらを捨てることができない。
海軍の戦略発想は、1905年の日本海海戦で大勝して以後、大艦巨砲主義、艦隊決戦主義が、陸軍は日露戦争での勝利によって白兵銃剣主義が唯一の戦略オプションに。
加えて、更に悪いのが「アンバランスな戦闘技術体系」。
戦艦大和は巨砲をもっていましたが、 遠距離方砲爆に必要なレーダーの性能が悪く、航空攻撃への防御も弱く、もてる力を出し切れずに海底に没しました。
零戦も、航続距離、スピードともに世界最高水準でしたが、軽量な超々ジュラルミンを使用したため、大量消耗に見合う大量生産が確立できなかった。
また、攻撃力を追求して防御力犠牲にしたため、熟練パイロットを多く失いました。
映画とかドラマとかでよくでてくるから「ばかなことしたよなあ」というのはかんたん。
でも、日本人の心の底には、「狭くて進化の戦略オプション」と「アンバランスな戦闘技術体系」が刷り込まれています。
すこしかっこよく言うと「劣勢な状況を逆転する、決戦兵器思想」です。
宇宙戦艦ヤマトは人類が滅ぼうとするとき、単独でガミラス帝国に立ち向かいました。
負けそうになると、いつも最後は波動砲で一発逆転。
根強い人気の「エヴァンゲリオン」。
EVAの正式名称を知っているでしょうか?「人型決戦兵器 エヴァンゲリオン」。
通常兵器ではまったく使徒に歯が立たず、NERVに侵入されるとセカンドインパクトが起きて人類は滅ぶ。EVAだけが頼み。
ガンダム・ファーストでは、劣勢だった連邦が、ホワイトベースとアムロの活躍でなんとか勝ち抜く。アムロはニュータイプで、木馬は新造戦艦、ガンダムはザクがまったく歯が立たない次世代モビルスーツ。
事業でも手詰まりなときほど、今ある資源とブランドで「とにかく、やってみよう!これしかないんだ!」となりがち。
意志決定者は、やるなら「失敗したときのやめ方」もちゃんと考えておかないと。
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NORIYUKI TANAKA/田中紀之
株式会社ディーツーコミュニケーションズ 事業開発本部 本部長
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