スペインGPは、ハミルトンがツーストップ作戦を成功させて見事な優勝を飾った。
フェルスタッペンは2番グリッドからスタートして一旦はトップに立ったが、ワンストップ作戦しか取れなかったため、終盤ハミルトンに逆転を許して2位に甘んじた。
スタートでルクレールに先を越されたボッタスは終盤に抜き返して3位に入った。
それにしても、メルセデスの万全の戦略とハミルトンの作戦実行力を見せつけられた一戦であった。
メルセデスはこれまでのの3戦は、マシン・パフォーマンスで僅かながら劣勢に立たされていた。
しかし、レッドブルのマシンは、中高速コーナーを速く回るためにはボトムスピードをなるべく落とさずにコース幅いっぱいでコーナリングしないと良いタイムが出ないという特性を持っている。
今シーズンは、初戦からコース・リミットを厳格にとるようになり、コース・リミットを守れないとペナルティを取られる。
これでは、フェルスタッペンは、コーナーで足枷をはめられたようなものだ。
おかげで、メルセデスは、シーズン前テストの状況からすれば開幕3戦は3連敗のはずだったところを2勝1敗で切り抜けることができた。
そして、第4戦スペインGPでは、メルセデスはレッドブルに対してマシン・パフォーマンスでもアドバンテージを取り戻した。
ただし、今のところメルセデスの持っているアドバンテージは、昨年までのようにPUの出力を絞って隠さなければいけないほど大きなものではなく、コースとタイヤによっては劣勢になることもある。
そこで、メルセデスは、スペインGPに勝つための綿密な戦略を、金曜日の朝から用意して実行した。
決勝でミディアムタイヤがもたなかった時のために、決勝用に2セット目のミディアムタイヤを温存したのだ。
決勝で使えるミディアムタイヤを1セット余計に残す為には、金曜日のフリー走行の段階から予選Q2までのタイヤ使用計画を立てて実行しなければならない。
そして、決勝セットアップでのミディアムタイヤの状態を正確に想定できないといけない。
さらに、フェルスタッペンがワン・ストップで走り続けた場合に、2度目のピット・ストップによって失う25秒をゴールまでに取り戻してコース上で抜き返す必要がある。
これは、極めて周到に用意された作戦ではあるが、ハミルトンのドライビング技術がなければ実現できなかった作戦でもある。
こうして、メルセデスとハミルトンは負ける可能性もあったレースを確実にものにした。
これで終わりではない。
レース後、メルセデスはハミルトンにレッドブルのリアウイングが直線では寝ていると指摘させた。
FIAは6月からウイングのフレキシビリティ・チェックを強化することになった。
メルセデス・チームは、今年初めてチャンピオンのタイトルを失う危険性を感じているからこそ、自身のパフォマンス以外の部分でも使えるものは何でも使ってレッドブルと戦おうとしている。
角田は、予選Q1敗退の16番手と振るわなかった。
決勝では14番手まで順位を上げたところで燃圧低下トラブルに見舞われ、8周目でリタイアした。
アルファタウリのマシンはこのコースでは速くなかったが、チームメイトのガスリーは何とか10位でフィニッシュした。
次は、伝統のモナコGPだ。
昨年は新型コロナ・ウイルスが蔓延していたため中止となった。
今年も、新型コロナの状況はさして改善しているわけではないが、開催が決定された。
ガードレールに囲まれたモナコの市街地コースは、最もドライバーの技量が試されるコースだ。
ただし、レースが始まってしまえば、パッシングのチャンスはほとんどない。
数年前にリチャルドがマシンにトラブルを抱えながらも後続を抑えきって優勝した。
モナコで優勝するためには、予選でポール・ポジションを獲ることが絶対条件だ。
ハミルトンは、モナコがそれほど得意とは言えない。
フェルスタッペンはモナコでの優勝経験がないが、ここをハミルトンに持っていかれたらチャンピオン獲得に早々と注意信号が灯る。
ルクレールはホーム・グランプリなので表彰台に上って大公から祝福を受けたいだろう。
モナコGPは、1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ボッタス、4位ルクレール、5位リチャルド、6位ノリス、7位サインツ、8位アロンソ、9位ライコネン、10位ガスリーかな。
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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
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