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YUKICHI OTSUKA 大塚雄吉
F1 ウォッチャー
幼少期にF1に魅せられ、50年以上にわたって、日本製のF1が出ていなくても、日本人F1ドライバーがいなくても50年以上にわたってF1を見続けてきた、F1 ウォッチャー。

Formula One 2015(7)2015 / 06 / 04

モナコGPには予期せぬ波乱が待っていた。
レース終盤、快速ルーキー、フェルスタッペンがクラッシュした。
まず、バーチャル・セフティカーが、続いて実車のセフティカーがコースに入った。
予選・決勝を通じて首位を独走していたハミルトンがスーパー・ソフトに履き替えるためにピットから呼び戻された。
この時点で、メルセデスのピットは2位・3位との差を見誤っていた。
ハミルトンがピット・アウトしてコースに戻る時にはロスベルグは前に行っており、フェッテルも鼻の差で前に出てしまった。
このためハミルトン圧勝のはずのレースが一転、ロスベルグ1位、フェッテル2位、ハミルトン3位の順で残り10周を争うことになった。
ハミルトンはリスタート後、激しくフェッテルを攻め立てたが、ここはモナコ、抜くことはできない。
結局、そのままの順位でゴールした。

昔からモナコの1勝は他のGPの3勝に値するといわれ、マシンの差があっても、ドライバーの実力によって予選で前に行くことができれば、勝つチャンスがあるといわれていた。
ワールドチャンピオンを2回獲っているハミルトンは、モナコでは1勝しかしていない。
ハミルトンが今年のモナコ優勝に懸ける意気込みは並々ならぬものがあった。
しかし、ハミルトンの努力はルーキーのクラッシュとチームの判断ミスでふいになってしまった。
今シーズン、スペインGP以外ではハミルトンの後塵を拝し続けてきたロスベルグはラッキーなモナコ3連勝目をあげることになった。
ゴールラインを横切った後、ハミルトンは海側のコーナーで一旦クルマを止めた。
怒りを沈め、気持ちの整理をしていたのだろう。
最後にパーク・フォルメに戻ってきて3位のスポットにマシン停めるとき、ノーズをボードに当てて1位より先にもって行った。
これが彼のメッセージだ。
ハミルトンは貴重なモナコの一勝を逃したが、これで今年のチャンピオンをほぼ確実にしたかもしれない。
ヘルメットを脱いだ後のハミルトンは、落胆していたが、見事な振舞を見せた。
怒りをチームにぶちまけても当然の状況なのに大人の対応をしていた。
これで、メルセデスチームは、ハミルトンのために今まで以上に万全のサポート体制をとらざるを得なくなる。
ハミルトンは最悪の不可抗力に対しても自分をコントロールできる精神性を手に入れた。
しかも、予選・レースともドライビングでロスベルグに負けたわけではない。
急にフェラーリやマクラーレン・ホンダがメルセデスより速くならない限り、ほとんど無敵状態と言える。

メルセデスがレース運営をしくじる中で、レッドブルは巧いチーム運営をした。
終盤、遅いタイヤで4位を走っていたクビアトに対して、速いタイヤで5位を走っていたリチャルドを先に行かせるよう命じ3位を狙わせたが、3位が手に入らないと分かるとクビアトを4位に戻すよう命じた。
今シーズン、マシン・トラブルに悩まされ続けてきたクビアトは、名誉あるモナコ4位の座を得てちょっぴりうれしかっただろう。
レッドブルとマクラーレン・ホンダはそれぞれモナコで少しパフォーマンスアップした。

次は、大西洋を渡ってカナダGPだ。
ジル・ビルヌーブ・サーキットは長い直線とタイトなコーナーを繋いだコースだから、最高速からのブレーキングを頻繁に強いられるれ、ブレーキとタイヤに厳しい。
このため、去年から重要性を増したのが回生ブレーキの性能とチューニングだ。
昔のF1ならブレーキだけで減速していたが、最近のF1は回生ブレーキによって減速時にプレーキの磨耗と熱エネルギーとして放出していたものを電気エネルギーに変えて蓄え、加速時に放出することによってエンジン・パワーをアシストする。
回生ブレーキと蓄えたエネルギーを制御するシステムがメカニカルブレーキと同等以上にマシンのパフォーマンスを左右する。
去年のカナダGPで、メルセデスのPUが中盤以降変調をきたして優勝を逃したのは記憶に新しい。
この次期のモントリオールはまだ涼しいが、晴れると昼間はけっこう気温が上昇する。
タイヤはスーパー・ソフトとソフトが用意されるから天気がいいとタイヤ戦略もレース結果を左右する。
ハミルトンはジル・ビルヌーブを得意としている。ホンダはついにトークンを2つ使った。

カナダGPは、1位ハミルトン、2位ロスベルグ、3位フェッテル、4位ライコネン、5位アロンソ、6位バトン、7位クビアト、8位マッサ、9位グロージャン、10位ナスルかな。

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YUKICHI OTSUKA/大塚雄吉
学会ネット株式会社 代表

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