Archive for the ‘Music / 音楽’ Category

 1973年・昭和48年のNo.1ヒット曲、殿さまキングスの「なみだの操」は、レコード売上げ200万枚を超すミリオンヒットと言われており、日本の歌謡界に燦然と輝くド演歌の代表曲です。
 昭和40年代に生まれた僕等の世代くらいまでは、大人も子どもも知っていたであろうこの曲。
当時僕は歌詞の意味もわからず、ボーカルの宮路オサムさんをまねて「あなた〜のためェ〜にィ〜」とコブシを回しながら歌っていた、フツウの男の子でした。
今あらためてそのヒットを考えてみると、この歌が流行った時代には一体誰が共感して、どうしてこれほどまでに売れたのか、理由がいまひとつわかりません。
 わかることはただ一つ、「これだけ女性が社会で活躍する時代になって、今この歌を新曲で出しても決して200万枚は売れないだろう」ということだけ。
 歌謡曲を研究するものとして、この謎は解かない訳にはいきません。
1973年前後にレコードが買えるような年頃だった人たちに、片っ端からこの曲のヒットの理由・当時の印象を聴いてみました。
 ところが・・・これがハッキリとした答えが返って来ないのです。
特に女性。
まずこのレコードを買った女性にちっとも出会わない。
この曲の印象を聴いても、「気持ち悪い」とハッキリ嫌悪感を示すか、「なんかテレビでよく出てたからそういうもんだと思ってた」という共感のない返事ばかり。
この曲は「おんな心」を歌っているはずなのに・・・。

 そこで、男性へのリサーチをもとにある仮説を立てました。
「なみだの操」を買ったのは、当時の働き盛りのオヤジたちではないか、と。
そこから立ち上ってくるストーリーを、現代に置き換えて想像してみました。
ちょっと長いですが、こんな感じです・・・

〜夜の新橋、会社帰りの上司と部下が立ち寄る、赤提灯の飲み屋街〜

「部長、今日だけは、黙って僕の話を聞いてくださいよ」

「なんだ加藤、まるでいつもは俺がお前の話を全く聞いていないような言い草だな」

「何言ってんすか、僕、部長と飲む時はここ何年も、部長の話とか説教とかずうーっと聴きっぱなしじゃないですか。しかも同じ話をくどくどと。耳にタコができてんすけど。まさか部長、それを自分で気がついていないんじゃ?」

「(コイツ今日はやけに挑発的だな。開き直ってんのか?いつもより強い酒のせいか?)わかったわかった、今日はお前の話をじっくり聞いてやろうじゃないの。」

「お願いしますよ!まったく・・・それで、いきなり家庭の話で何ナンですけどね、最近、子育て疲れのせいかウチの嫁が冷たくて・・・」

「ハイ!じゃあ飲むのはお開き!まだ間に会う時間だから、すぐに家に帰って、嫁のかわりに子どもを寝かしつけてきな。ハイそれで解決!」

「部ぅ〜長ぉう!話を聞いてくぅださいよおぉう!」

「こら、体を揺らすな揺さぶるな!ホッピーがこぼれるだろうが。しょうがないやつだな。それでお前はどうしたいんだ!嫁さんと仲直りしたいのか?それともここで夫婦生活の愚痴をこぼしたいのか?」

「部長、僕の話ちゃんと聞く気ないんでしょ?早くこの話題を終わらせたいって感じがその貧乏ゆすりでミエミエだ!」

「馬鹿やろう!5年前を忘れたか?お前のあの派手な結婚式に出て、高い祝儀を出して、なおかつ新郎側の会社の上司として挨拶までしてやったのは誰だ?おまえのことを俺がどれだけ気にかけてやっているか・・・お前のミスを総務や経理への根回しでどれだけ帳消しにしてきたことか!」

「じゃあちゃんと聞いてくださいよっ!つうか逆に部長に聞きたいんですよ。部長は結婚して何年?」
「なに俺のところ?えーちょっとまてよ・・・(指折り数えて沈黙30秒)はい、22年だ間違いない!」

「部長、結婚して20年以上の先輩としてお聞きしたいんですが、この先どうやったら奥さんとずっと仲良く、うまくやっていけるんすか?ウチは、このままいくとますます夫婦仲が冷えちゃいそうで。結婚したての頃は、あんなに愛し合っていたのに。あの素晴らしい愛はどこへって感じッスよ・・・」

「加藤くんよ、改まっていうのもナンだが夫婦なんてそんなもんだ。たとえ恋愛結婚だったってな、子どもができちまったら恋愛感情がそう何年も続くもんか。加藤、ウチなんてな、寝る部屋も別、洗濯物も別、電話の子機も別、パソコンもメールも別。家に帰っても挨拶もなければ目も合わさない。会話は専ら携帯メール経由、内容は子どものことオンリー。夫婦の愛情なんて、年月が過ぎれば質も量も移り変わるもんなんだよ。永遠の愛なんて、そりゃ宝石屋の商売文句でしかないわな。愛が不安定で心が不安になるから、経年変化しなさそうな高い石ころを欲しがるんじゃないか。」

「はぁ・・・この人、結婚式で挨拶した時と言ってることがまるっきり違う(深いため息)」

「(なんだ、コイツ余計に落ち込んだぞ。折角おれがいい助言してやってるのに)なあ加藤、そんなにメゲるな。こんなときはなあ、歌でも歌うんだ。俺もかつてはそうやって鬱憤を晴らしたもんだ。さァ、場所変えて、歌える店へ行こう!ビバ!ハッスル!」

「えぇぇ・・・なんか気が晴れる予感が全くしないんですけど・・・それで、部長はそんな時はどんな歌を歌ってたんですか?」

「そりゃド演歌に決まっているだろう!だがな裕次郎とかひばりではだめだ、もっと、こう、歌ってて気持ちよくなるようなテンポのいいやつでだな、そうだな・・・あれだ、殿さまキングスとかスカっとするしもう最高だな!なみだの操、いいねえ。オサムちゃん最高!」

「ド演歌って・・・なんスか?殿さま?キング?なんか言葉の意味がダブってないスか?」

「馬鹿ッ!加藤、『殿さまキングス』を日本語に訳してみろ、『殿さまな王たち』になるじゃねえか、男の最上級だぞ。お前の好きなほら、あの何だっけ、ジャイケルマクソンだっけか?あいつも自分で「King of Pop」って名乗ってただろ。簡単に言えばアイツ並みってことだ。キングクリムゾンだとかジプシーキングスとか、それぞれの歌謡ジャンルでキングと名のつく奴ぁ、大物に決まってるんだ。殿さまキングスは、まさに歌謡曲の王道にふさわしいグループだぞ!」

「でも、『なみだの操』って曲名、なんかキングなイメージに合わない気がするんですが・・・」

「かァーっ、わかってないねェ新人類は。何故俺がおまえにこの曲を紹介したと思う?この歌の主人公はなぁ、男に身も心も捧げる健気で可愛そうな女なんだよ。そのか弱い女の一途で純情な恋ごころを、殿さまでキングな男がコブシを回しまくって歌いきる、そんな痛快さをお前に教えてやろうってんだよ。お前も殿さまかキングにでもなったつもりで、嫁さんとのことは棚に上げて歌うんだよ。とにかく、スカッとするぞ!」

「部長、いまiPadで『なみだの操』をネット検索かけて出てきた歌詞を見てるんですけど、『決してお邪魔はしないから、あなたのそばに置いてほしい』とか、『汚れを知らない乙女になりたい』とか『お別れするより死にたい』とか、そんなこという女の人、僕の周辺に全くいないっスよ。部長のいう主人公の女性キャラが、まったく想像できないんですが。うちの部署で言うと誰が近いンスか?」

「馬鹿モン!うちの部署なんかで例えようとするんじゃない!このご時世にそんな女なんているもんか。加藤、まだわからないのか・・・お前は嫁さんがつれないからって、ほかの女と浮気をするぐらいの覚悟はあるのか?んん?」

「えェェ?部長、浮気とか、ちょっと声が大きいッスよ!僕、まだそんなことは・・・」

「だろう?即離婚なんて考えてないだろう!子どもに辛い思いはさせたくないだろうが!」

「部長、声デカイ!興奮し過ぎ!だから僕は離婚とか、言ってないって」

「だ・か・ら!つくり出すんだよ自分の中に!こさえるんだよ理想の女を!せめて歌の中だけでも、自分にかしづいてくれる哀れな女をだ!慈悲をかけたくなるような、なんかこう、あれだ、お前好みの哀れな女。それが男のロマン!それが男のカタルシス。それがここ、サラリーマンの巣窟・新橋にお前がいる理由だ!わかったか?じゃあとにかく次の店へ行こう。まずは俺がオサムちゃんばりのコブシとテカリで殿さまキングスの手本を見せてやるからな。『なみだの操』だけじゃナンだから今日は特別に『けい子のマンボ』も聴かせてやる。加藤腰ぬかすんじゃねえぞ!オヤジ!帰るからおあいそね!ハイよろしくどうぞ!」

「(小声で)あぁー、結局今日も部長のペースでハシゴかよ・・・だからド演歌とか歌謡曲って、嫌いなんだよね・・・」

(想像おわり)

もし当時、このレコードを新曲として買った人がいたら、その買った理由を是非聞かせてほしいです。
殿さまキングスの元ボーカル、宮路オサムさんは今でもソロで活躍されており、今でもご本人の衰えないその歌声でオリジナルの「なみだの操」を聴くことができます。
僕は、テレビで宮路さんのニヤついた?歌い顔を見て育ちましたので、この歌を聴くと条件反射的にニヤつきます。
最近聴いた殿さまキングスのベストなんて、もう電車の中で聴いている間じゅうずっとニヤつきっぱなし。世間的にまずいです。
とくに「けい子のマンボ」は、ラッシュ時、混み合った電車内では決して聴かないよう、それだけはいつも心がけています。

miura_image

RITO MIURA/三浦鯉登
作曲家・ミュージシャン・昭和歌謡研究家

Comments (0) | Trackbacks (0)

ロイ・オービソンへのオマージュたっぷりの「You’re Only Lonely」の大ヒットから5年。
最近J.D.Souther(以下J.D.)の1984年作「Home by Dawn」をよく聴いている。
世の中のこのアルバムに対する評価がどのようなものかは知らないが気にせず言ってしまおう。
僕はこのアルバムが大好きです。
しかしなぜゆえこのアルバムが好きなんだろうか。。
ちょっとその検証をしてみようと思う。

まず、当時すぐ気づいた事柄としてはコロンビアからワーナーへ移籍していた、ということ。
普通大ヒットが出るとその次回作へのプレッシャーは相当なものだ。で、ここからは邪推だが。。。
「You’re Only Lonely」の大ヒットに気をよくしたコロンビアが彼に次回作を急かし、その対応にほとほと疲れたJ.D.はワーナーに移籍をしたのではないか、という仮説が成り立つ。

あと見た目で明らかに前作と違うのがジャケット。
前作ではワイシャツにネクタイ姿のJ.D.Southerが下を向いている哀愁ただようジャケットだったが、この「Home by Dawn」では得体の知れない女性とのツーショットであった。
この女性は当時私が所蔵していたLPのブックレットにも登場するのでジャケット写真のために呼ばれたモデルではなさそうである。ということは肩書は別としてが当時J.D.が心から愛した女性であり安らぎの求め先であったことは間違いない。

サウンド面ではどうか?
全編に聴かれるドラムサウンドは彼自身の手になるものである。
経費がなかったのか、アットホームなスタジオワークが狙いだったのかは不明だが、このドラミングも味があって非常によい。
一方でイーグルスのドン・ヘンリーやティモシー・B・シュミットがコーラスをしている曲があったり、リンダ・ロンシュタットとデュエットしている曲があったりとゴージャスな部分もある。
楽曲もほとんどがラブ・ソングであり彼の幸せ感を感じることが出来る。

結局このアルバムは非常にパーソナルなものではないか?ということにたどり着く。
アーティストのその時の精神状態(それがいい時であれ、悪いときであれ)がストレートに表されるアルバムを好きになることが多い僕です。

さて、こんな仮説を楽しんでいたら彼の来日公演を見る機会に恵まれた。

優しそうに一曲、一曲をリラックスした雰囲気で演奏する彼の顔を見て、あのジャケットの女性とは今でも一緒にいるのだろうか?とふと考えを巡らせしてしまった。

「You’re Only Lonely」は当然ながらが、彼が作詞作曲者に名を連ねるイーグルスの「Heartache Tonight」が聴けるなど楽しく、聴きごたえのある非常にいいライヴであった。

が、気がつくとライヴは「Home by Dawn」からの曲が全く演奏されないまま終わってしまった…

「Home by Dawn」で一緒に写っていた彼女にJ.D.は振られたのか?
幸せに満ちたプライベートな作品故、その幸せが終わると演奏すらもしない、という分り易いことなのか?

「別れた女が憎いから、彼女のために書いた歌なんて歌えるかいっ!」ってことか?

これは日本で言うところの「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ってことかなぁ〜?

以上、自分勝手な推測で書いておりますのであしからず。。。

でも僕がこのアルバムが好きなことには変わりはありません。

POSTED BY:
oki_image

HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 放送企画統括部長

Comments (0) | Trackbacks (0)
23 4 月 2010

あの日から一年

Author: admin | Filed under: 11.沖秀史(USEN), Music / 音楽

ブラッディ・マリー。
それがカクテルの名前であることを高校生の僕は知らなかった。

この名前をバンドの名前にしたのは当時好きだった甲斐バンドのアルバムの中の曲名だったというのがその理由。
僕のアマチュアバンド歴において初めてオリジナル楽曲を演奏することになったのがこのブラッディ・マリーというグループ。
しかも後期のビートルズのようにライヴは一切やらず、友達の家に集まっては各自のオリジナルナンバーをアレンジし、録音することを楽しみとする自己満足バンドであった。
メンバーは僕を入れて3名。
各々がヴォーカル、ギター、ベース、ハーモニカ、ピアノなどを曲によって担当分けしていた。
基本は自分の作曲した曲は自分がアレンジし、ヴォーカルを担当する。残り二人に実際に演奏して聴かせてみせてアレンジをしていく。
当時4チャンネルのカセットマルチレコーダーに10曲を詰め込んだテープは今でも僕の宝物である。

 さて、導入が長くなってしまったがどうしてこのような書き出しになったのかは、改めてRCサクセション(以下、RC)の初期の3枚を改めて聴いて思い出したことがあるからだ。
この初期の3枚に共通して僕が抱くのが「郷愁」の2文字。
曲のイメージしかり、当時のRCのメンバーとレコード会社の微妙な関係値しかり。
G→Bmなど郷愁を誘うコード進行、maj7などのコードの響きがかもし出すそこはかとない淋しさ。。
今でこそロックのRCと言われていた彼らが、デビュー当時のフォークバンドっぽい時期に作り出した楽曲が生み出したこの郷愁は、後にロックのバンドと言われた彼らのレパートリーの中にも多数存在する。

当時の僕はそんな郷愁の虜になってしまった一人だ。
「金儲けのために生まれてきたんじゃないぜ」「ヒッピーに捧ぐ」に表現される切なさは後に「いい事ばかりはありゃしない」「Johnny Blue」などにも受け継がれていると感じる。
僕の最初のオリジナルバンド、ブラッディ・マリーを結成した頃にはまだRCサクセションの初期の3枚を知る前であったが、僕達のオリジナルソングのアレンジと微妙に似ている曲が多かったので、僕達は勝手に「自分達のやっていることは間違っていない」と勝手に思っていた。

「ヒッピーに捧ぐ」は「お別れは突然やってきて」という歌い出しから始まる。
まさに突然やってきたこのお別れから早一年。僕は毎年あの日の郷愁を思い出すだろう。

POSTED BY:
oki_image

HIDESHI OKI/沖秀史
株式会社USEN 放送企画統括部長

Comments (0) | Trackbacks (0)
 Back 1 2 3 4 ...11 Next